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私には内縁の妻と子どもがいるのですが、私が死んだ後、妻と子の相続はどうなるのでしょうか?

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2024年9月3日

1 内縁の妻の相続権

⑴ そもそも内縁関係とは何か

内縁関係とは、社会生活上夫婦として生活する意思があり、夫婦としての実態はあるものの、婚姻届を提出していない状態を指します。

内縁関係が認められるためには、原則としてある程度の期間同居する等、共同生活を営んでいることが必要です。

もっとも、同居をしていなくても、互いの家に寝泊まりする等、親密な関係が長期間継続していた場合は、内縁関係が認められる場合があります。

そのため、たとえば東京の違う区に住む二人であっても、毎週のようにお互いの家を行き来し、休日を一緒に過ごすような関係が何年も続けば、内縁関係が認められる場合があります。

⑵ 内縁関係と夫婦の法律上の違い

内縁関係にある二人は、実質的には夫婦に近い存在であるため、夫婦間に適用される法律が一部適用されます。

たとえば、同居して互いに協力する義務、他の異性と性的関係を持たない義務、内縁関係解消の際の財産分与などの法律が適用されます。

また、労働者の災害補償や年金保障などについても、内縁関係は夫婦と同様の扱いがされます。

さらに、一方的な内縁関係の破棄に対しては、慰謝料を請求することも可能です。

しかし、日本の法律では、相続権を持っているのは血縁関係がある人に限られています。

例外として、配偶者には相続権が認められていますが、あくまで婚姻届を提出した配偶者でなければ相続権が認められず、内縁の妻に相続権は認められていません。

仮に、内縁関係が何十年続いていたとしても、婚姻届を提出していない場合は、内縁の妻には相続権が認められないのです。

したがって、内縁の夫が死亡した場合、内縁の妻は夫の財産を相続することはできません。

⑶ 内縁の妻に財産を相続させる方法

内縁の妻に対して財産を残したいと考えるのであれば、一番効果的な方法は遺言書を作成することです。

なぜなら、遺言書は自己が亡くなった際に、自己の財産を誰に渡したいかというメッセージであり、そのメッセージには法的な効力が認められるからです。

たとえば、東京の自宅と土地を内縁の妻に渡したい、という場合であれば、そういった内容の遺言書を作成しておけば、内縁の妻に財産を残すことができます。

⑷ 遺言書を作成する際に気を付けるべき点

遺言書の作成方法は法律で厳格に定められているため、1つでもルールを間違うと、遺言書全体が無効になるということもあります。

また、戸籍上の妻やその子どもには遺留分があるため、全ての財産を内縁の妻やその子に相続させると、後々トラブルが発生する可能性があります。

そのため、遺言書の作成は遺留分対策もセットで行わなければなりません。

遺留分対策について詳しくは、こちらもご参照ください。

内縁の妻やその子どもに相続させる遺言書を作成する際は、相続問題を多く取り扱っている私たちにご相談ください。

2 内縁の妻との間に生まれた子どもの相続権

⑴ 子どもには相続権があります

親が結婚しているか否かに関わらず、子どもは親の相続について相続権があります。

かつては、結婚している夫婦の子どもと、内縁関係の二人の子どもは、遺産の取り分について差が設けられていました。

内縁関係の二人の子どもは、結婚している夫婦の子どもと比べて、半分の遺産しか取得することができなかったのです。

例えば、AさんがWさんと結婚し、長男Xさんと次男Yさんを授かったというケースで考えてみましょう。

Aさんと妻Wさんは仲が険悪になり、別居することになりました。

その後、お互い東京に居住しているものの、10年間会うこともなく暮らしていました。

その後AさんはFさんと出会い、AさんとFさんは内縁関係になりました。

その結果、AさんとFさんは長女Dさんを授かりました。

この場合にAさんが亡くなると、かつての法律では、妻Wさんが遺産の2分の1を取得し、長男Xさんと次男Yさんは遺産の10分の2を取得し、内縁関係の二人の子どもである長女Dさんは遺産の10分の1しか取得することができませんでした。

このような差が存在した理由として、日本の結婚制度は、婚姻届を提出して始めて婚姻関係が発生するという法律婚主義を採用していることがあげられていました。

しかし、親が婚姻届を提出していないことについて、子どもには何ら責任がありません。

それにも関わらず、子どもの相続権を半分にしてしまうことは不平等なため、今の法律では、内縁の妻の子どもであっても、平等に相続ができるようになりました。

上の例でいえば、妻Wさんの取り分は変わりませんが、子ども3名は遺産の6分の1ずつを取得することになります。

⑵ 内縁関係の子どもが相続権を持つためには認知が必要

結婚している二人の子どもであれば、戸籍上当然に親子関係が認められます。

しかし、内縁関係の二人の子どもは、戸籍上親子であることの記載がありません。

そのため、法律上親子関係があることを示すために、認知という手続きが必要になります。

認知とは「この子は自分の子である」と認める行為を指します。

認知の方法としては、市役所に書類を提出する方法や、遺言書の中に認知する旨を記載する方法があります。

この認知という手続きによって、内縁関係の二人と子どもは法律上親子として認められます。

認知をしておかないと、親子関係が法律上認められず、相続権がないものとして扱われることになるため、注意が必要です。

もっとも、母親については、出生届を提出する関係上、出生届提出後は、戸籍上親子関係が認められることになります。

⑶ 内縁の子どもに多くの財産を残したい場合

法律上の妻や、その妻の子と疎遠になったため、内縁の妻との間の子どもに多くの財産を残したいと考えた場合、遺言書を作成することが効果的です。

たとえば、東京の自宅に内縁の子どもと同居していて、自分の死後もそのまま東京の自宅に住み続けて欲しいと考えた場合は、東京の自宅を子どもに相続させるという内容の遺言書を書くとよいでしょう。

また、生前贈与によって、多くの財産を内縁の妻との間の子に渡しておくことも考えられます。

もっとも、生前贈与は、遺産の先渡しと考えられているため、生前贈与をするだけでは、内縁の妻との間の子どもに多くの財産を渡すことはできません。

さらに、生前贈与をする場合は、贈与税にも注意する必要があります。

そのため、遺言書作成や生前贈与を検討されている方は、法律と税金両方からサポートができる私たちにぜひご相談ください。

3 事実婚をしている方が相続について気をつけた方がよいこと

⑴ 事実婚をしている二人には相続権が認められていません

事実婚とは、夫婦として生活する意思があり、夫婦として生活している実態があるものの、婚姻届を出していない状態を指します。

日本では、法律婚主義が採用されているため、婚姻届を提出した夫婦にしか相続権は認められていません。

そのため、仮に事実婚をしている夫が亡くなった場合、妻は夫の遺産を相続できないことになります。

そこで、お互いに遺産を相続するには、早い段階から対策を講じる必要があります。

こちらに事実婚や同性カップルのための相続対策についての記事もありますので、参考にしてください。

⑵ 遺言書の作成が効果的

事実婚をしている二人が、互いに遺産を受け取るためには、遺言書を作成しておくことが効果的です。

人はいつ亡くなるかわかりませんし、遺言書は何度でも作り直すことができますので、すぐにでも遺言書を作成し、お互いに万が一のことがあった場合に、しっかりと遺産を受け取ることができるようにしておくと安心です。

たとえば、東京の自宅で一緒に暮らしている二人であれば、どちらかが亡くなった際、残された方がずっとその自宅に住み続けることができるように遺言書を作成しておくとよいでしょう。

⑶ 遺言書を作成する場合の注意点

遺言書の書き方は、法律で厳格に定められており、一つでもルールを間違えると、遺言書全体が無効になってしまう可能性があります。

ここでは、遺言書作成のルールを簡単にご説明します。

まず、ご自分で遺言書を作成する場合、記載しなければならないことは、①遺言の内容、②日付、③氏名です。

これらを全て自筆で書いたうえで、④押印する必要があります。

もっとも、相続財産の目録については、パソコンで作成することが可能です。

ただし、その目録には自筆で署名し、押印する必要があります。

このように、遺言書の作成は細かい決まりがたくさんあります。

また、事実婚をしている相手に全ての財産を相続させるという遺言書を作成した場合、相続人が遺留分を請求してくる可能性があります。

そのため、他の相続人とトラブルにならないような工夫も必要です。

⑷ もし遺言書を作成する前に亡くなった場合

事実婚の二人のどちらかが、遺言書を作成する前に亡くなった場合、最後の手段として、特別縁故者という制度があります。

特別縁故者とは、相続人ではないものの、亡くなった方と生活を共にしていた人や、介護に務めた人などに、遺産の一部を与える制度です。

ただし、特別縁故者の制度が使えるのは、相続人が一人もいない場合に限られます。

参考リンク:裁判所・特別縁故者に対する相続財産分与

そのため、相続人がいる場合は、この制度を利用することはできません。

事実婚をしている二人に、子や兄弟などの相続人がいる場合は、やはり遺言書を作成する必要があります。

⑸ 遺言書の作成を検討されている方へ

遺言書の作成は、法律的な知識はもちろん、税金についても深い知識が要求されます。

私たちは、法律の専門家である弁護士と、税金の専門家である税理士が必要に応じて連携することができるため、法律のことも税金のこともそれぞれ別の事務所に足を運ぶことなく相談をすることが可能です。

遺言書の作成を検討されている方は、ぜひ私たちにご相談ください。

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