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自筆証書遺言と公正証書遺言の両方がある場合はどちらが優先しますか?

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2022年8月9日

1 自筆証書遺言と公正証書遺言の優先順位

公正証書で作成された遺言の方が優先すると勘違いしている方がおられますが、公正証書遺言と自筆証書遺言は優劣の関係にはありません。

公正証書・自筆証書どちらであるかにかかわらず、複数の遺言書が存在し、その内容が矛盾する場合には、後に作成された遺言が優先します。

例外的に後に作成された遺言が無効になり、先に作成された遺言が効力を有するケースは、先の遺言を作成した時点で遺言を作成する能力を持っていた方が、その後に認知症等により遺言を作成する能力を失ってしまったような場合です。

2 公正証書遺言が優れている点

⑴ 無効になりにくい

公正証書遺言は、公証役場において公証人の口授を経て、2人の証人の確認をとりつつ作成されますので、ミスにより法定の要式を満たさないということはありません。

加えて、公証人や証人が確認することにより、遺言能力が備わっていることもある程度担保されていますので、後から遺言が無効となることが少ない遺言です。

自筆証書遺言は、全文自筆でなければならない、日付や署名捺印が必要である等、法定の要件を備えていないと無効になってしまいますが、1人で作成できてしまうため、作成時にミスに気づかないということもあり得ます。

また、後から、遺言時の意思能力が争われることも公正証書遺言と比較すると多くあります。

後ほど、遺言能力を争われる可能性が少しでもあるのであれば、遺言作成時の意思能力につき、医師の診断書を取っておくと安心できます。

⑵ 偽造や紛失の恐れがない

公正証書遺言の謄本は公証役場で保管されますので、偽造される心配はありませんし、紛失の恐れもありません。

自筆証書遺言は作成後、自宅の中等で保管することが多いため、偽造されてしまったり、紛失してしまう可能性が残ります。

⑶ 字が書けなくても作成できる

公正証書遺言は、口授により行うことができますし、公証人が主張することで施設などでも作成ができます。

自筆証書遺言は遺言書の全文を自筆で作成する必要があり、字が書けないと作成はできません。

⑷ 相続発生後の手間がかからない

公正証書遺言は、自筆証書遺言とは異なり、裁判所の検認が必要なく、執行がスムーズです。

3 自筆証書遺言が優れている点

⑴ すぐに作成ができる

公正証書遺言は、文案を公証役場と確認したり、作成日を予約したりするなど、準備が必要ですので、すぐに作成することはできません。

自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば、すぐにでも作成ができますので、気軽に作成が可能です。

万が一公正証書遺言作成中にご自身になにかある場合に備え、自筆証書遺言で遺言を作成しつつ、公正証書遺言の作成を準備するという方法をとられる方が安心です。

⑵ 費用がかからない

公正証書遺言は、公証人に払う手数料が発生し、費用がかかりますので、自筆証書遺言に比べると割高です。

⑶ 想いを伝えやすい

自筆証書遺言は自筆で作成しますので、相続人に対して、なぜそのような遺言を残すのかという想いを伝えやすい遺言です。

公正証書遺言においても、付言事項といって、法的効力はないけども伝えたいことを記入する事項の部分に、想いを記載することはできますが、パソコンの文字と自筆では、やはり自筆の方が想いは伝わりやすい側面があります。

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