遺産分割と特別受益
1 特別受益は遺産分割時の計算の際に影響が出ます
特別受益とは、被相続人から特定の相続人に対して与えられた特別の利益のことをいいます。
例えば、被相続人の遺言で特定の相続人に対して遺贈が定められていた場合がこれに当たります。
また、被相続人が生前に、①婚姻のための贈与、②養子縁組のための贈与、③生計の資本としての贈与のいずれかに当たる贈与をしていた場合にも特別受益とされます。
このような特別受益があるとされた場合、遺産分割時の計算方法に影響を及ぼします。
2 特別受益がある場合の遺産分割の仕方
⑴ 特別受益の持ち戻しを行った上で、遺産を分割する
特別受益があるとされた場合、特別受益の相続財産への持ち戻しが行われます。
ただし、遺贈の場合には相続開始時の財産に遺贈に係る財産が含まれているので持ち戻しは不要です。
持ち戻しが行われた相続財産が、本来各相続人に分配されるべき相続財産であるということで(みなし相続財産)、みなし相続財産を前提として各相続人の具体的相続分が計算されます。
そのうえで、特別受益を得た相続人は、既に特別受益として利益を得ていますので、具体的相続分からは既に得た特別受益の額が控除されることになります。
⑵ 持ち戻される特別受益の評価基準
なお、持ち戻される特別受益について、いつを基準時として金銭的に評価するべきであるのかが問題となりますが、判例(最判昭和51年3月18日(民集30巻2号111頁))は、「贈与財産が金銭であるときは、その贈与の時の金額を相続開始の時の貨幣価値に換算した価額をもって評価すべき」としており、相続開始時が基準となるとされています。
参考リンク:最高裁判所判例集
3 特別受益としない意思表示をすることも可能
なお、上記の特別受益の持ち戻しについては、被相続人の意思によって持ち戻しを免除することができます。
すなわち、民法903条第3項は「被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思」に従うと規定しており、被相続人が相続人に対して行った特別受益について持ち戻しを免除することが遺言書等から明らかである場合には、上記のような特別受益の持ち戻しの計算は行わないこととなります。
公正証書遺言を作成する際の流れ 遺産分割協議書を作成する時の流れ